日本の電機産業衰退の原因を先日次のようにまとめました。
電機産業は、製品のデジタル化により高度な技術を必要としない組み立て産業となりました。そのため、人件費の安い国に価格面でかなわなくなりました。さらに円安が追い打ちをかけています。再生の道は二つです。一つは、高い技術を必要とする商品を開発すること、もう一つは活動の基盤を海外に移すことです。
国内の従業員を活かすためには、新興国では太刀打ちできない高い技術を必要とする商品を開発する道しかありません。しかし、日本の電機産業からはそのような商品を開発できる技術者が、もはやいなくなっています。かつては、日本の企業にもスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのような人物がいました。決して大金持ちになったり、世の中に知られることはありませんでしたが、技術にこだわりをもち誇りをもって仕事をしてきた人たちがいました。
そのような人は、今はいなくなってしまっています。その原因の一つには、採用方法があります。かつては、学歴偏重といわれましたが、有名大学卒業であれば、教授の推薦でほぼ無条件で採用されていました。その中には、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのような異端の「問題児」も混ざっていました。それが、人物本位の採用となった結果、そのような「問題児」は採用されなくなりました。仮に、採用試験をすり抜けたとしても、業績評価でスポイルされ続けました。もはや、残っているのは平凡な当たり前の発想しかできない技術者だけです。
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのような人物を育てることはできません。彼らは、持って生まれた能力を毀損されずに大人になっただけです。彼らのような「問題児」を採用し、徹底的に技術にこだわった活動ができる環境が、日本の電機産業復活には必要です。