日本は財政破綻し、ハイパーインフレがおきるという『日本大沈没』と日本の財政破綻やハイパーインフレは起こりえないという主張を比較しました。『日本経済の真相』、『日本は破産しない!』、『経済ニュースのウソを見抜け!』などが、日本の財政破綻やハイパーインフレは起こりえないと主張しています。
まず、財政破綻の定義ですが、国債が債務不履行になることで、両者は一致しています。ハイパーインフレの定義は、『日本大沈没』が、1923年の1年間でパンの価格が10億倍以上になったドイツの例をあげていますので、このようなインフレと考えます。
『日本大沈没』では、財政破綻およびハイパーインフレへのシナリオを3つあげています。
1.ヘッジファンドなどによる国債の空売り
日本の財政赤字の深刻化を理由に、日本国債に対し、外国勢(ヘッジファンドなど)による仕掛け(空売り)が起きるという想定です。日本国債は暴落し、財政破綻に突き進んでしまうと予想しています。
2.国債入札が未達
日本の金融機関は、景気悪化で不必要になった融資向けのお金を、国債購入に振り向けてきましたが、金融機関のやりくりが限界となり、国債購入に振り向けるお金がなくなるという想定です。国債入札で未達(国債が完売できないこと)が起きれば、財政破綻になる可能性が十分にあるとしています。
また、国民が円預金を引き出し、外貨投資をいっせいに始めると、銀行の円資金が不足します。すると、銀行のお金がなくなりますから、銀行は国債入札に参加できないどころか、国債を売却しないと、円預金の引き出しに対応できなくなってしまうという状況もありえるとしています。
3.ハイパーインフレ
国債が下落し、国債の先物市場でストップ安が続くと、取りつけ騒ぎが起きると想定しています。取りつけ騒ぎを収めるために、日銀は、国債の引き受けか貨幣の大量発行を行います。これが、ハイパーインフレを引き起こすとしています。
さらに、財政破綻リスクが懸念されるだけで、国債で担保されている日銀券の価値が急落し、ものの値段が上がり、ハイパーインフレが起こりえるとしています。
これに対し、『日本経済の真相』、『日本は破産しない!』、『経済ニュースのウソを見抜け!』では、次のように主張しています。
1.外国勢が日本国債を投売りしたら、円安になり景気が回復するだけです。
2.国債の日銀引き受けは、借換えのために毎年行われています。
3.日本国債は自国通貨建てのため、貨幣を大量発行して返済にあてることができます。そのため、日本国債の債務不履行はありえません。
4.ハイパーインフレが起きるのは、供給能力が不足して、もの不足が発生したときです。日本の製造業や輸送機械工業の供給能力は十分にあり、もの不足は発生しません。インフレが始まったときには、金融引き締めでインフレのコントロールが可能です。現在の日本でハイパーインフレは起こりえません。
このように両方の主張を並べてみるとよくわかります。
1.ヘッジファンドなどによる国債の空売り
ヘッジファンドなどが国債を大量に空売りしたときは、ヘッジファンドの手元に円が残ります。仮に、この円でドルを買うと円安になるということは納得がいきます。また、国債が安くなることも、納得できますが、国債が債務不履行とならない限り、償還期限まで待てば、円と交換できるわけですから、大量に空売りしたとしても、財政破綻すなわち国債が債務不履行となることとは関係ないように思えます。
2.国債入札が未達
国債入札が未達となっても、借換えの範囲であれば、日銀が引き受けることができます。問題は、日銀引き受けが借換えの範囲を越えた時です。この場合は国債が下落し、新規発行もできなくなりますが、債務不履行になることには結びつかないと思います。
また、国民が円預金を引き出し、外貨投資をいっせいに始めると、円安となり、景気は良くなるでしょうが、銀行にお金がなくなり、国債入札に参加できなくなるとする理由がわかりません。銀行が日銀からお金を借りればいいだけの話ではないでしょうか。
3.ハイパーインフレ
日本国債は自国通貨建てであり、貨幣を大量発行して返済にあてることができるため、日本国債の債務不履行はありえません。そのため、国債が下落して取りつけ騒ぎが起きるとは、思えません。仮に取りつけ騒ぎが起きたとしても、貨幣を融通すれば回避できます。
景気回復のために金融緩和をして、インフレが始まったとしても、日本の製造業や輸送機械工業の供給能力は十分にあり、もの不足は発生しません。そのために、金融引き締めでインフレのコントロールが可能です。戦争でも起きない限り、ハイパーインフレはありえません。
結論
『日本大沈没』とその他の本を読み比べると、日本に財政破綻やハイパーインフレが起こるという主張は、間違っていると言わざるを得ません。経済については、勉強を始めたばかりですので、どこかに誤りがあれば、ご指摘いただけると幸いです。