ITバブルのころだったか、「お金儲けって、悪いことですか」と尋ねて話題になった人がいました。
このことについて少し考えてみたいと思います。
1.江戸時代の日本
「武士は食わねど高楊枝」という言葉や、「士農工商」という言葉からわかるように、江戸時代の日本には、金儲けは卑しいことという意識がありました。
2.キリスト教
新約聖書にも、マタイ伝19章に次のような言葉があります。
「金持ちが天国に入るのはラクダが針の穴を通るよりも難しい」
金銀財宝はすべて分け与えなくては、天国に行くことはできないと教えています。
3.物語
ベニスの商人では、金貸しのシャイロックは、悪く描かれています。
イソップ物語でも、「金の斧、銀の斧」や「骨を加えた犬」の話などは、金銭欲や物欲を戒めている話です。
悪いやつは金を持っているという話はいたるところにあります。
4.マルクス
マルクス主義では、資本家は労働者を搾取する階級です。
5.資本主義の精神
逆の話を、マックス・ウェーバーが、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で説明しています。
世俗的禁欲を持って天職に励むことにより利潤を得ることは、安くて良質な商品やサービスを人々に提供したという隣人愛の実践の結果だとしました。
資本主義の利益追求がプロテスタントの考えに根ざしているということです。
6.現在の会社
会社は、利益を出すことにより、雇用を確保し、税金を納めることで社会に貢献しているという説明が成り立ちます。
7.最近の自己啓発書
金儲けに対する心理的な壁を取り払うよう訴える本が数多くあります。
まとめ
金儲けというよりも金銭欲や物欲に囚われることを戒める言葉は、世界中に昔からあります。
おそらく、その結果としてもたらされるものを見た反省から来ています。
資本主義経済において、利益追求を正当化する理由づけが、後から付け加えられたといえます。
それぞれの考えの妥当性を別にしても、このような歴史的背景は頭に入れておいた方が良いように思います。