大学のお客は社会で、学生は商品か?

安田講堂

日経ビジネス2015年4月6日号の「賢人の警鐘」に次のような記述がありました。

では、大学にとってのお客は誰か。少子化が進み、学生の確保が以前よりも難しくなる中、学生をお客さん扱いするのも分からなくはない。だがそれは誤りだ。言葉は悪いかもしれないが、大学にとってのお客は社会であり、学生は商品である。

そのように考える理由は書かれていません。

「大学のお客は社会で、学生は商品」は正しいか?

一般の市場では、お客様に商品を提供し、その対価としてお金をもらいます。大学は学生を社会に提供し、社会からお金をもらっているのでしょうか?

明らかに違います。大学にお金を払っているのは、学生です。あるいは、その親です。大学は学生に教育というサービスを提供し、その対価としてお金をもらっています。

間違った発想の元

それでは、学生が商品でお客は社会だという発想はどこから来たのでしょうか?

書いているのは大企業の相談役ですから、社会とは企業社会を意味していると思います。企業は大学に対し、企業に必要な学生を育成し、送り込んでほしいという願望があります。

企業に合わせて、学生を企業に都合のよい人間にすることを望みます。上司の言う事に疑問を持たず、忠実に従う学生を望む会社もあります。

企業は大学に企業で役立つ教育を望み、大学は学問を学ぶための教育が必要だと考えます。しばしば企業と大学と対立するところです。

「大学のお客は社会で、学生は商品」という考えは、企業側の願望を一方的に述べただけのものにすぎません。

どのような教育を受けるかは、大学にとって本来のお客様である学生が選ぶことです。

企業に入ってすぐに役に立つ教育を受けたいならば、そのような教育を行う教育機関に行けばよいことです。もっと人間としての幅を広げたいと考えるならば、そういう教育を行う学校を選べばいいのです。

企業が学生に対し、「もっと入社してすぐに役に立つことを勉強して来い」と言うことはありえます。その場合、学生がそのような企業を選ぶかどうかという問題になります。

長い間、企業社会にいた人は、頭が固くなり、他の人の立場からものを考えられないきらいがあります。

おわりに

企業と大学の教育に関する考え方の違いは、私が大学に入学した40年以上前からありました。入学して間もないころでした。大学の先生がこんなことを言っていたことを覚えています。

「企業の人は大学で学生にすぐに役に立つことを教えてほしいというけれど、すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなることです。学生には、いつまでも使えるものの考え方を学んでほしい。」

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