ネットにトンデモなウソに関するエントリがふたつ流れてきました。
『情報を読み解けば未来が見える – ネットに氾濫するトンデモなウソにどう対処するか(その1)キーワードで見分けるウソ:ITpro』では、「水からの伝言」「江戸しぐさ」「EM菌」を例にあげています。
「水からの伝言」は、「水にきれいな言葉をかけて凍らせるときれいな結晶になり、汚い言葉をかけると汚い結晶になる」というものです。本気で信じる人がいることをにわかには信じられない内容です。
「江戸しぐさ」は、「江戸時代には現代に通じるマナーがあったが、現在はすたれてしまった」というものです。これは本当かどうかの判断が困難です。検証のためには江戸時代の風俗を丹念に調べなければなりません。
「EM菌」は、「何種類もの細菌が相互に助け合って繁殖する状態では、農地の土壌改良、食品廃棄物の堆肥化、水質浄化などに効果がある」というものです。これも検証のためには科学的な実験が必要です。
もうひとつのエントリは、『情報を読み解けば未来が見える – ネットに氾濫するトンデモなウソにどう対処するか(その2)陰謀論??人間の認知の仕組みをクラックするウソ:ITpro』です。「911同時多発テロは米政府の自作自演だ」という陰謀論と「アポロ計画による人類の月面到着は米政府のでっち上げだ」という陰謀論を例にあげています。
人間には時系列の因果関係で理解しようという傾向があります。ふたつのことが連続して起こると、ふたつのことには因果関係があると考えがちです。
また、人間はたとえで解釈しようとします。知らないものを知っているものと同じようなものだと考えようとします。
そして、何かが起こったときに、誰かの意志で起きたと考えがちです。人間はお互いに顔色を読みあって生活する性質があります。
これらの3つの人間の性質が、陰謀論のはびこる原因となっています。
因果関係で考えようとする性質と知っているものに関連付けようとする性質は、科学技術を進歩させてきた性質です。これらの性質があるからこそ、物理や化学の法則を見つけられたといえます。
ものごとが誰かの意志で行われたと考えがちな性質は、宗教を生み出しました。
「水からの伝言」「江戸しぐさ」「EM菌」および陰謀論は、いずれもネットに限った話ではありません。昔からあった話です。
ネットではろくに読まずにリツイートしたり、シェアしたりする人が多いため、より拡散しやすくなったというだけです。
なぜ、ろくに読みもせずリツイートやシェアをするかというと、実名でないという気軽さがあります。実名でないから変なものを拡散してしまったとしても、恥をかくことがないという意識が働きます。
ろくに読みもせずに、目についた言葉に反応している人たちにウソを見分ける方法を知らせても意味はないかもしれません。容易にウソだとわかる「水からの伝言」のような話でさえ拡散させてしまいます。
ましてや、「江戸しぐさ」や「EM菌」のように簡単に真偽を確認できない問題はなおさらです。
基本的に情報は疑ってかかり、裏付けとなる事実や実験結果を確認できたときに、はじめて信頼度を増していくという心構えが必要です。
また、因果関係で考えたり、同じようなものに関連付けたり、誰かの意志だと考えたりしがちな人間の性質も理解した上で、ものごとを判断していくことも必要です。
すべてのものを疑ってかかるという心構えは、科学的態度として当然のことです。ネット時代においては、それに加えて人間の性質の理解も深め、自らの判断をしなければなりません。