あなたは、難しい意思決定を迫られたとき、どのようにして決断しますか?
私がよくやる方法は、意思決定にかかわることをすべて書き出し、それを眺めて決断を下す方法です。
案がいくつかあれば、その長所と短所をすべて書き出します。そうすると、実際に意思決定に大きな影響を及ぼす要素は数個に絞られます。それらを考慮し決断を下します。
ところが、人には、この方法では避けられない大きな欠点があります。『決定力! :正解を導く4つのプロセス』は、人が意思決定をするときに陥りがちな罠を4つあげています。
その4つの罠を紹介します。
視野の狭窄
ひとつ目は視野の狭窄です。選択肢を狭めすぎ、白か黒かで見てしまう傾向です。
人は、あらかじめ与えられた選択肢の範囲だけで考えてしまいます。ひとつだけを選択しなければならないと考えてしまいがちです。
視野の狭窄を避けるためには、「もっといい方法はないか? ほかに何ができるだろう?」と考え、答えを見つけることです。
今考えている選択肢がどれも選べないとしたら、他に何ができるかと考えることもよい方法です。
「OR」ではなく「AND」で考える習慣は、視野の狭窄を遠ざけてくれます。
もっと選択肢が必要なのに行き詰って出てこないときは、同じ問題を解決した人を見つけることも一策です。外部も内部も、高い視点からも探します。
逆の立場で考えると、成功事例を記録しておくことは、他の人の役に立つことです。
確証バイアス
2つ目は確証バイアスです。人は自分とウマの合うものを選びがちです。自分とウマのあうものが、最高とは限らないと、頭で理解していてもダメです。
感覚的に決定した後に、それを裏づける情報を選択的に探します。長所も短所も都合よく作り出します。
確証バイアスを避けるには、あえて反対意見を求めたり、反証的な質問をすることです。
口コミを探したり、専門家に聞いたりすることも有効です。ズームアウトして外部の視点を持つことと、ズームインして実例を確認することの両方が必要です。
小さな実験を行ってみることも必要です。試して確認できることであれば、予測して間違えることはありません。
一時的な感情
長い時間をかけたものや、多くのお金をかけたものを捨てるときには、感情が揺さぶられます。これが、第3の罠です。
正常な思考を妨げる一時的な感情を乗り越えるためには、一定の距離をおくことです。その決断について10分後にどう感じるだろうと想像してみます。10ヶ月後は? 10年後は? と考えます。
なじみのあるものを好む単純接触効果と、利益の喜びよりも損失の痛みの方が大きい損失回避の感情があることを理解しておかなければなりません。単純接触効果と損失回避は、現状維持バイアスとしても現れます。
傍観者の視点から状況を見つめることで、距離を置くことができます。「親友が同じ状況にいるとしたら、何とアドバイスするか?」と問うことは強力な助けになります。
長期的な価値観、夢、目標のような核となる優先事項を明確にすることは、意思決定を容易にします。
自信過剰
4つ目が自信過剰です。自分が実際以上に未来予測にたけていると思ってしまうことです。過去に大きな実績を残している人ほど、陥りやすい罠です。
自信過剰の対策は、誤りに備えることです。
予測には幅を持たせます。最悪の場合と最善の場合です。どちらの場合に対しても、対策を考えておきます。また、予測が難しいものには安全率をかけることも必要です。
人は、一度、意思決定を行うとそのまま流されがちです。アラームをセットすることで、選択肢があることに気づきます。特に変化が少しずつ起こる場合に効果的です。
アラームには、日付、指標、予算などのほか、予想外の問題もあります。
集団の意思決定は、公正と認められなければなりません。全員が選択に満足できるまで、駆け引きを行えば、公正と認められます。
おわりに
人間の弱点を理解しておくことで、その弱点による影響を最小にできます。
『決定力!』は、意思決定における人間の弱点を分析し、豊富な実例と共に対策を提示しています。
現代社会で人が生きていくうえで、必読の一冊と言えます。