日本企業の出世のメカニズム | 定年起業のためのウェブコンサルティング

日本企業の出世のメカニズム

出世階段

会社に勤めている人にとっては、出世は一番の関心ごとです。それにもかかわらず、なかなか本音で語られることがありません。

働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実 (新潮新書)』(楠木新)では、そこのところをうまく説明しています。知っているのと知らないのでは、大違いですので簡単に紹介します。

日本企業はメンバーシップ契約

日本企業の社員となるということは、会社というコミュニティーのメンバーになることを意味しています。

法的には、労働者が労働力を提供し、使用者がそれに対して賃金を支払う契約となっています。しかし、実際の会社と社員との関係はそれにとどまりません。

年齢や勤務年数をはじめとする序列や人間関係、人との縁といったものがついて回ります。日本企業が正規雇用の社員とそうでない社員との間に格差をつけるのはそのためです。

仕事帰りの飲み会、歓送迎会や社員旅行など、雇用契約や就業規則に書かれていないにもかかわらず、多くの人が参加するのもこのためです。

実質的にメンバーシップ契約であるため、採用の際に最も重要なことは、一緒に仕事ができるかどうかです。自分の部下や後輩として一緒に働きたい人かどうかです。

個人の能力や向き不向きは二の次になっています。学生時代の成績や取得した資格には、あまり重きをおきません。

これが、日本企業の際立った特徴となっています。

同期の意識

もうひとつの日本企業の特徴として、同期の意識があります。同時に入社したことにより、新入社員研修や寮生活をともに過ごします。そこに強い帰属意識と競争意識が育まれます。

多くの企業では、入社年次ごとのグループで人事評価を行います。出世できるというモチベーションをできる限り維持するため、最初はあまり差をつけずに、入社年次別に評価し、序列を決めていきます。

同一コミュニティーのメンバーとして、社員同士が協調しながら仕事を進め、長期的に社員の適性を見ていくのが評価の基本となります。

この出世できるというモチベーションを維持しながら、長期的に社員の適性を見ていくという日本企業の人事政策が、日本企業で成果主義がうまくいかない原因の一つとなっています。

上司と接触を持つ

会社というコミュニティーの中で、評価を行うのは上司です。上位の上司や人事の担当者では、個々人のことは把握しきれません。最終的な調整を上位上司や人事部門で行うことはあっても、上司の評価が基本となります。

そのため上司との関係は、評価のための最も重要な要素になります。日本企業は、協調して仕事を進めることを重視しますから、評価の際に、仕事の業績や個人の能力にあまり重きをおきません。

すると、上司との人間関係が人事評価に直接影響するようになります。ゴルフの好きな上司のもとでは一緒にラウンドすることが、麻雀好きの上司には勤務時間後も雀荘に付き合うことが、酒好きの上司とは連日一緒に酒場に繰り出すことが大切なことになります。

ヒキが大事

社長と同じ職場で仕事をした人が、出世するのはよく見られる傾向です。かつて一緒に働いたことがあるという関係で、気心が知れた社員を手許に置きたいという心情は自然なものです。

そのため、権限や権力が集中している部門と、そうでない部門が発生します。社長が経験してきた部門が、しばしばエリートコースとなります。

上司との関係を紡ぐ力

日本企業では、仕事の実績はそれほど意味を持ちません。仕事の業績を上げれば、上司のことなど関係なく、高く評価されると思うのは間違いです。

上司が満足していれば、仕事の出来不出来はそれほど問われません。上司が不満足であれば、仕事がうまくいっても安心できません。

日本企業が成果主義を導入した時にうまくいなかった原因はここにもあります。表面上は業績を上げることを勧めながら、実際には上司を満足させた者が昇格するということが行われました。

必死になって業績を上げた社員のモチベーションを大きく損なったことは、言うまでもありません。

上司の望む枠内に収まる能力

部下から人望があり、業界の中でも影響力をもつ人は、次のトップになるとは限りません。トップが自分の立場を覆す人を後継者には選ばないためです。

トップが望んでいる能力の範囲に収まっていることも大切なことです。

他部課との調整力

中間管理職にとっては、他部課との調整は最も重要な仕事です。利害関係が相反していたり、メンツにこだわる人やおごれる人がいたり、さまざまな障害が発生します。

たとえ仕事の本質とは外れたことであっても、それぞれのメンツも立てながら、部門間の調整をやっていかなければなりません。

まとめ

まとめると、結果的にエラくなる人と長く一緒にやっていく能力を持っている人が偉くなるということです。

結果的にというのは、能力や人望よりも、実際にエラくなった人との関係が大切だということです。

このエラくなる人と長く一緒にやっていく能力には、向き不向きもあります。また、このことを知っていても、やりたくない人もいます。

この日本企業の出世のメカニズムは、日本企業凋落の原因ともなっています。

日本企業の人事の特徴については、こちらの記事もご覧ください。

『日本の人事は社風で決まる』日本の会社では社風にあった人が出世します。

また、エラくなる人と長く一緒にやっていく能力を皮肉たっぷりに描いた本もあります。

皮肉でいっぱい、だけど真似する人が続出しそうな『戦略おべっか』

日本企業を皮肉った『戦略おべっか』

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