受験勉強は、受験生の相対的な優劣を争うもので、自分が高い点ととることと、競争相手が低い点ととることが同じことを意味します。
競争相手が怠惰であることが、自分に優位に働きます。
学会でも、査定する人だけに向けて発表される論文があると聞きました。特定の査定者だけがわかればいい、「これがわからないやつは読むなよ」ということで書かれた論文です。
企業においても、自分の業績を示す数字だけを良く見せようとする人がいます。
職場の同僚はライバルであり、ノウハウやスキルの共有はされません。若年者の育成も行われません。
顧客に向き合わず、社内営業に精を出し、自分の数字だけをあげるために血眼になります。
中には不法行為に手を染める者も現れます。一部の企業では、これが成果主義導入の結果です。
本来は、企業においては、企業全体の業績を向上させ、その結果を社内で分かち合うものです。
ノウハウやスキルは社内に広めるものであり、人材育成は企業にとって最重要事項です。企業活動の目的は、最終的に人類の進歩と平和に結びつくものです。
自分の専攻する領域における問題を専門外の人にわかりやすく説明できることは、専門家にとって必須の技術です。
学術研究というものは、過去の人類の積み重ねの上に成り立っています。なるべく大勢の人に理解できる形で発表されるべきです。
受験勉強でさえ、ほとんどの学校では受験者数が十分に多く、統計的に合格最低点がほぼ決まっています。
受験生は、その合格最低点を上回るように努力すれば良いだけです。同級生が良い成績を取るかどうかは、自分の合否には関係ありません。
ゆがんだ競争主義に踊らされて、自己の利益だけを追い求めるよりは、ノウハウや新しい技術、発見を皆で共有し、全体で発展していく方が、より良い社会になることは自明のことです。