少し前のことですが、読書感想文マニュアルが話題になっていました。
読書感想文マニュアル、あり?なし? 配布する小学校も:朝日新聞デジタル
マニュアルは次の項目からなり、具体的な例も示されています。
- 小説の一部を抜き出す
- 抜き出した部分についての自分の考え
- 本を選んだきっかけ、読み始めたときの感想
- 自分の体験
- 書き出しの部分に戻り、新しく感想を付け足す
- その本を読んで、自分がどう変わったか
主な反対意見
このマニュアルに対する主な反対意見は、画一的な感想文になるというものです。
そこから、個性が育たないという批判や、この方法で文章の技量が鍛えられるのかという疑問につながっていきます。
真似から始まる
画一的な感想文になるという批判はそのとおりです。
しかし、小学生の読書感想文です。どう書いていいのかわからない子供も多いと思います。
マニュアルに従って書いてみて、それで物足りない子供は自由に書けばいいだけです。
このマニュアルに従っていない読書感想文は、評価を下げるということさえ行われなければ問題ありません。
どんなことでも最初は真似から始まります。真似ができるようになったら、独自のものを加え、最後は自由に書きます。
昔から「守破離」と言われていたことです。
始めは型を決め、型に合わせて書くことに習熟してから、型から外れたものを書くことは、文章の練習でも王道です。
この方法で文章の技量が鍛えられるかという疑問に対しては、小学生の読書感想文としては、十分に鍛えられるという回答になります。
私の場合
私が小学生の時は、あらすじを書いて、感想としては「面白かった」か「つまらなかった」しか書けませんでした。
先生からのコメントは、「もう少し詳しく書きましょう」といったものだったと記憶しています。「面白かった」をどう詳しく書けばよいのか、よくわかりませんでした。
小学生の私には、「面白かった」を分解して詳細に表現することはできませんでした。
そんな小学生だった私でも、自分の感想をたくさん書けそうな本がありました。
ドストエフスキーの『罪と罰』です。少年少女世界文学全集に入っていたものなので、子供向きに書かれていたはずです。
主人公のラスコーリニコフが金貸しの老婆を殺した後、どこかに血がついていないかを神経症的に気にする場面が、学校に行く前に忘れ物がないかを気にする自分とそっくりだと思いました。
しかし、それは読書感想文には書きませんでした。書いたら変に思われると考えたからです。
そのときは神経症についても何も知りませんでした。高校生か大学生のとき読んだ本で神経症のことを知り、小学生時代の自分の症状と似ていると思いました。
小学生でもそんな自己防衛本能が働いて書かないことがあります。自分が感じたことをそのまま書けと言われても書けるものではありません。