仕事も勉強もただ一生懸命やれば良いというものではありません。より効率的な方法を見つけた方が、目的を達成しやすくなります。
人はそれまでにやってきた方法を続けようとします。その方法を改善しようとはしますが、なかなか別のやり方を見つけようとはしません。
しかし、それでは大きな進歩はありません。『イノベーション・シンキング』では、革新的な別の方法を見つけるために「水平思考」(ラテラル・シンキング)を勧めています。
ここでは、その中から10のテクニックを紹介します。
1.前提を疑う
問題を解決しようとするとき、無意識のうちに先入観をもってしまうことがあります。問題の中に、解決を妨げる前提が含まれることもあります。
そのような呪縛から逃れるためには、誰もが根深い前提にとらわれていることを認識しなければなりません。過去にうまくいった経験や当然だと思っている常識を疑わなくてはいけません。
中世の天文学は、なぜ星が地球の周りを回るのかを研究する学問でした。地球が宇宙の中心であることが前提でした。
2.探り出す質問をする
初心者の目で、当たり前だと思っていることについて質問してみることは有効です。想像力を働かせて、誰もが当然だと思っていることでも質問することです。
「どうすれば」ではじまる具体的な質問は役に立ちます。「どうすれば在庫を半分にできるか?」という具合です。
「なぜ」を繰り返す質問もよく使われます。「なぜ」は原因に対し、有効な対策がとれるところまで繰り返します。
3.見方を変える
ものの見方を変えてみます。違う方向から見れば、新しいものが見えてきます。他の人の立場に立って考えることも良いことです。囲碁や将棋では、相手の立場で考えれば、それまで気付かなかった新しい手が見えてきます。
問題を再構成することもいい方法です。キーワードを書き出し、関係があるものを結び付けていきます。すると新たな関係が浮かび上がってきます。KJ法やマインドマップが具体的な手法になります。
4.奇抜な組み合わせをしてみる
関係のないものを組み合わせると独創的なアイデアがわきます。奇抜な組み合わせであればあるほど、予想外のものが生み出されます。
辞書からランダムに言葉を抜き出し、その言葉との組み合わせからアイデアを生み出す方法がよく使われます。
5.アイデアを採用し、応用し、さらに改良する
ある分野で行われていることを別の分野にも適用してみます。無理やり結びつけることで、独創的なアイデアが生まれます。
モールス信号の発明者は、駅馬車が中継基地で馬を入れ替えることから、電信機の信号を増幅する中継機を思いつきました。
6.ルールを変える
うまくいかなければルールを変えることも必要です。
スポーツの世界ではよく行われます。日本人が金メダルをとるとルールを変えられます。水泳では潜水が禁止され、スキーのノルディック複合では、得点の配分が変更されました。
日本人が有利になるように、自らルールを変更したことはあるのでしょうか?ルールを変えるという発想は、日本スポーツ界が最も苦手とする思考方法です。
7.アイデアの量を増やす
たくさんのアイデアを出せば、奇抜で、ばかばかしく、創造的で、画期的なアイデアも出てきます。それらを組み合わせたアイデアも生まれます。最初のうちは、アイデアは質よりも量です。
たくさんのアイデアが出てから、それらを分類しふるいにかけます。つまらないと思えるアイデアをはじめから否定することは具の骨頂です。
偉大な天才はおびただしい数の作品を生んでいます。それらがすべて傑作というわけではありません。ピカソも松尾芭蕉も手塚治虫もみんなそうです。
8.試してみて、評価する
アイデアを調べるためには試してみることです。試してみると、頭の中で考えているだけではわからないことも見えてきます。
アイデアを試すためには、まず小さな規模で実行してみます。うまくいかなければ手を引いて、別のアイデアに進むことができます。
エジソンは9000回以上の実験ののちに電球を発明しています。
9.失敗を歓迎する
失敗から学べることはたくさんあります。失敗は教訓の宝庫です。失敗しなければわかりません。
実験の失敗が、偶然、新発見をもたらした例は、枚挙にいとまがありません。コロンブスはインドへの新しい航路を発見しようとして、アメリカ大陸に到着しました。
ただし、新しいことに真摯に取り組んだことによる失敗と、事前準備や検討不足による失敗は分けて考えなければなりません。
10.チームを活用する
アイデアを出すときは、小さなチームが理想的です。お互いに刺激しあうことができます。ある人のアイデアが別の人のアイデアきっかけとなることがあります。
まとめ
アイデアを出すときには、水平思考(ラテラル・シンキング)が必要です。しかし、苦手な人には難しいものです。そんな人は、新しいアイデアを考えるときに、この10個のテクニックをひととおり使ってみることをお勧めします。何度か繰り返せば、水平思考(ラテラル・シンキング)に慣れてきます。
なお、『イノベーション・シンキング』には、水平思考(ラテラル・シンキング)が豊富な実例とともにより詳しく説明されています。ぜひ一読をお勧めします。