貧しい家庭環境の学生は、自制心が強いほど細胞が老化しているという実験結果が発表されています。
Self-control forecasts better psychosocial outcomes but faster epigenetic aging in low-SES youth
自制心の強い子供は、将来、社会的に成功する可能性の高いことを示した実験として、マシュマロテストが有名です。
職員の子どもたちが通う、学内の付属幼稚園の4才の子ども186人が実験に参加した。被験者である子どもは、気が散るようなものが何もない机と椅子だけの部屋に通され、椅子に座るよう言われる。机の上には皿があり、マシュマロが一個載っている。実験者は「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」と言って部屋を出ていく。
我慢した子供のほうが、その後の大学進学適正試験(SAT)の点数も高く、社会的な成功度も高く、大脳の活発度においても重要な差異が認められたということです。
今回の実験は、豊かな家庭環境に恵まれた学生は、自制心が強いほど細胞が若いにも関わらず、貧しい家庭環境の学生は、自制心が強いほど細胞が老化していたというものです。
自制心が健康を害する理由
貧しい家庭環境の学生は、自制心が強いほど細胞が老化する理由を考えてみます。
ストレス
すぐに思いつくのはストレスです。
貧しい家庭環境の自制心の強い子供は、目の前の欲望を我慢して、将来のために勉学に励んだり、働いたりする機会が多いと想像できます。
日本でいえば二宮尊徳のような子供です。
目の前の欲望を我慢することが、本人は気づかなくても過剰なストレスとなり、細胞の老化につながっていると考えられます。
裕福な家庭環境の子供は、自制心が強くても、目の前の欲望を我慢しなければならない機会が少ないと考えられます。
貧しい家庭環境そのもの
貧しい家庭環境そのものが、細胞を老化させていることも考えられます。
貧しいため十分な栄養が取れず、細胞が老化していると考えられます。あるいは、貧しいための過酷な労働が、細胞を老化させている可能性もあります。
十分な実験データがあれば、裕福な家庭環境と貧しい家庭環境で、自制心の弱い子供の細胞の老化に差があるかどうかを見てみたいものです。
貧しい家庭環境で、自制心の弱い子供と自制心の強い子供の細胞の老化の差との比較の問題となります。
家庭環境の差には思いもよらないハンディキャップがある
裕福な家庭環境と貧しい家庭環境では、普段食べるものや、身に着けるもの、触れるものが違います。
この実験結果は、それだけでなく、同じ能力の子供でも、裕福な家庭環境か、貧しい家庭環境かで、思いもよらないハンディキャップがある可能性を示唆しています。
直接触れる物やストレス以外でも、日常の生活で交わる周囲の人の言動などによる影響も大きいと思います。
生まれた環境による差別をなくすことは、とてつもなく難しいことだと、改めて考えさせる実験結果です。