重力波が発見されたというニュースが世界を駆け巡りました。ノーベル賞は間違いなしとも言われています。
昨年、梶田教授がニュートリノの質量の発見でノーベル賞を受賞したときも、何の役に立つと聞いた人がいて話題になりました。重力波の発見もすぐには役に立たないのでしょうか?
重力波とは
重力波とは、質量をもった物体が運動したときに伝わる波動現象です。1916年にアインシュタインが一般相対性理論でその存在を予想していました。しかし、あまりにも効果が小さいため観測が極めて困難でした。
重力波の性質
重力波は次の性質をもっているとされています。
- 光速で伝わる
- すべてを貫通する
- 減衰しない
電磁波と似ている点
重力波との比較で、しばしば電磁波が引き合いに出されています。
電磁波とは、電気と磁気の波のことです。いわゆる光も電波もX線も電磁波の一種です。1864年にマクスウェルが、電磁波の存在を理論的に予想しました。わずか152年前のことです。
人間は可視光線を見ることはできますが、電磁波については、それまで知りませんでした。
現在では、電磁波はテレビ放送、無線通信、がん検診など生活に密接なところで当たり前のように使われています。
重力波の使い道
重力波の発見は、アインシュタインの予想から100年たっています。
人間は、地球の重力は感じますが、重力波については、それまで知りませんでした。
重力波は電磁波のように何かに使えるでしょうか?
現実的な用途は天体観測です。宇宙からの重力波を観測することにより、超新星の爆発やブラックホールの動きなどの観測ができます。宇宙誕生時の秘密がわかるかもしれません。
SFでは、ロケットの推進力に使うアイデアがあります。現在のロケットは、ガスを噴射する反作用で推進力を得ています。それに対し、重力波を操ることにより、サーフィンするように推進力を得るアイデアです。
このアイデアでは、ロケットの推進に使えるほど効率的に、重力波を操ることができるかどうかがわかりません。
重力波を電磁波と同じように、通信に使うアイデアもあります。伝送速度は光速で電磁波と同じです。すべてを貫通し、減衰しないという性質は大きなメリットです。
減衰しないため、宇宙船との通信で使えるといいかもしれません。
日本からアルゼンチンのような地球の反対側との通信でも、地球の内部を通った最短距離の通信ができます。地表の回線や宇宙空間を使う現在の通信よりも、距離が短い分早く到達します。
わずかな時間かもしれませんが、コンピュータにとってみれば、多くの処理ができる時間です。
重力波が極めて弱いことと、地球自身が大きな質量をもっているため、大きな雑音となるなど、解決すべき課題はたくさんあります。
まとめ
重力波は現在のところ、天体観測以外に実用的な用途は見つかっていません。しかし、電磁波は短期間で実用的な用途が生まれました。思いもよらないところから、新しい技術が生まれるかもしれません。