現代の日本人と昔の日本人の比較論をときどき目にします。特に基本的な人間の力すなわち、どのような状況下でも自分で考え行動し生き抜く力が、現代の日本人は昔の日本人より劣っているという論がありますが、はたしてそうでしょうか。
昔といってもいろいろあります。戦前といわれる昭和10年代、江戸時代、ずっとさかのぼって原始時代と平成20年代を比較するとどうでしょう。
大災害が発生して、水も食料もエネルギーも満足に得られない状況を想像すると、どの時代でもあまり違いはないと思います。どの時代でも、人々はなんとか水と食料を調達しようとするでしょう。当然、体力、知力には個人差があり、このような状況ではその差が大きく現れるでしょうが、時代による差があるとは思えません。平均すれば、最も栄養状態のいい現代の人が、一番生存率が高いことは、間違いないといえます。
自分で考えて行動するという面を考えた場合でも、現代の人が最も自分で考えて行動します。昭和10年代も軍部の独走に抵抗した人はいましたが、ごく一部でした。江戸時代にはほとんどいなかったのではないでしょうか。原始時代は、よくわかりませんが、さまざまな情報を得ている現代の人よりも、自分の考えで行動していたとは思えません。
どのような状況下でも自分で考え行動し生き抜く力は、どの時代と比較しても、現代の人が最も優れていると考えることが妥当です。現代の日本人が昔に比べると劣っていると感じるのは、単なる懐古趣味といえます。