数学の解答には、エレガントな解答と力ずくの解答があります。エレガントな解答とは、幾何学でいえば、一本の補助線がひらめき、解答を導くような解答です。数学の美しさにほれぼれとします。力ずくの解答とは、ゴリゴリと何行にもわたる計算をして、やっとたどり着くような解答です。
私は、圧倒的にエレガントな解答が好きで、エレガントな解答のない問題は悪い問題というイメージさえ持っていました。数学の楽しさはエレガントな解法を見つけることにあり、力ずくで解くなどということは、美意識のかけらもない無粋な人のやることだと感じていました。
数学が苦手な人は別にして、数学が得意な人は誰でも同じように感じているものだと思い込んでいました。その思い込みがくずれたのが大学に入ってからです。ゴリゴリと力ずくで計算していくほうが好きだという人がいました。私は、信じられない人間に会ったような気がしました。一行ずつ計算していく課程が好きだと言っていましたが、私にはわかりませんでした。どうして彼が力ずくの解法の方が好きなのか聞き出そうとしましたが、結局、理解できませんでした。
世の中には、自分の理解できない人間がいることを知った青春時代の思い出です。